2012年01月11日

calm

 最近、ビートルズの「オクトパス・ガーデン」に関心を持っている。リンゴ・スターが混乱に陥ったグループを嘆いて作ったと有名な歌だ。海の底のタコの庭で、おもしろおかしく過ごそうよ。そんなふざけたことを言いながら、平穏を希求していたことが悲しいほど伝わってくる。

 いま、「オクトパス・ガーデン」をオマージュした詩を書いている。リンゴの悲しみを受けて、俺らしいアイロニーで応えて、そしてもっと穏やかな詩。



 昨日、帽子屋。濃くも薄くもないベージュの、つばの小さなハットがあった。鏡に映してみると、形も大きさもしっくりきている。ちょうど羽織っていた紺の上着とも合っていた。
 左の側面から後頭部にかけて、グリーンの文字が入っていた。

 IT'S A GOOD DAY TO DIE
 死ぬにはいい日だ

 意地悪く読めば、自殺日和ってとこだろうか。なんとも変なことを書いた帽子だ。恋人はこのテキストがとても気に入らなかったようで、購入に強く反対した。俺はそんな彼女をなだめながら、しぶとく鏡の前に立っていた。
 しばらく見ているうち、こんな明るくて気分のいい帽子が、よりにもよって自殺なんてするだろうかと思い始めた。形容はともかく、何よりもGOOD DAY(いい日)じゃないか。きっと死んでも惜しくないくらい、とてつもなく幸福な日のことなんだ。
 俺はものすごくその帽子がほしくなったんだけど、彼女がご機嫌斜めだったので諦めた。帽子と恋人じゃ、どちらが大切かは天秤にかけるまでもない。帽子なんてなくても、十分にいい日じゃないか。

 帰宅して、あれこれ片付けを済ませたあと、またあの言葉を思い出した。死んでも構わないくらいのいい日なんて、なんて美しいんだろう。
 きっと何か引っかかるだろうと思って検索すると、案の定みつかった。ネイティブ・アメリカンの言葉だった。
 死を迎えるのに、これほどいい日はない。ありとあらゆる命、声、畑、家族、善、そして悪。すべてが在るがままの美しい日……。

 神がサタンを滅ぼして楽園が訪れるのではなく、何もかもがそのままで、ただ自然に隆盛し、自然に朽ちる。まるで禅のようなcalm。すべてそこに在る(色)のに、何もない(空)かのようだ。

 IT'S A GOOD DAY TO DIE

 俺も、こんな穏やかな詩を詠もう。
posted by 渡邉健太 at 04:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 未分類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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